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イベルメクチンが多発性硬化症(MS)モデルマウスの神経細胞回復を促進させるという研究報告


スペインの医療記事より、スペインの研究チームが多発性硬化症を発症させたマウスにイベルメクチンを投与したところ、神経細胞を回復・再生させる働きを示したというものです。2018年の研究です。


3年ほど前、イベルメクチンが体性神経系を回復させる効果を示すという海外チームの論文が発表されました。運動機能障害を持つ人にとって希望となり得る研究でしたね。

それよりも以前の2018年、イベルメクチンが神経細胞を回復させる可能性という研究が既に発表されていた訳です。私は今まで米国や英国のサイトばかりを検索していましたが、欧州各国やインドの情報なども詳しく調べる必要があるかもしれません。

多発性硬化症は指定難病で、神経細胞が破壊され機能しなくなり全身麻痺が生じる病気です。今現在も確たる治療法がない為、指定難病となっています。

以下の研究報告に出てくる「再ミエリン化」とは、神経細胞の修復を指します。これは多発性硬化症だけに留まらず、例えばALSやアルツハイマー認知症などの研究でも再ミエリン化が回復において重要であることが判明しつつあります。

某医療専門家の方が、「アルツハイマー認知症アミロイドβだけが原因ではない、そんなことは常識だ」と、イベルメクチン肯定派に対する批判を暗に示唆したブログ記事を投稿していましたが、これは医療に関心がある者なら誰でも知っていることでしょう。

イベルを巡っては、一部で感情的なやり取りが行われている印象があります。過信も禁物なら、明確ではないリスクを強調してバッシングすることも同様だと私は考えています。

医療専門家の視点でしか分からない専門的な意見もあるでしょうし、一方では素人だからこそ概念やバイアスに縛られず見えてくることもあります。感情的な投稿は否定派・肯定派互いに如何かと私は思います。それよりも、紹介するような希望を持つことができる情報を出すことが大切ではないでしょうか。


さておき、海外の医療系フォーラムの投稿を見て回ると、イベルメクチン投与で精神疾患が改善したという報告が一部に見られます。日本国内のSNS投稿でもこういった声が一部で出ていることは事実です。

そこでこの研究報告です。イベルメクチン投与で再ミエリン化(ミエリン修復)という結果が示された。上記の通り、再ミエリン化は認知症回復のカギを握るだけではなく、統合失調症など精神疾患回復のカギも握ると言われています。

では、記事をどうぞ。

 

 

イベルメクチンが多発性硬化症マウスの神経細胞回復を促進させる


一般的な抗寄生虫剤が、多発性硬化症(MS)モデルマウスにおいて炎症を予防し、神経細胞の回復(再髄鞘化=再ミエリン化)を促進することを示した


イベルメクチン(ストロメクトール、またはスーラントラとして販売)は、脳に存在する免疫細胞であるミクログリア細胞に存在するP2X4Rと呼ばれる受容体の活性を促進し、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE:ヒトのMSに類似した誘発性自己免疫疾患)の臨床症状を緩和した。

具体的には、イベルメクチンが「現在使用されている薬剤の中で、ミエリン損傷の修復を促進する可能性を持つ候補」であることを示唆する証拠が見つかった、と研究者たちは記述している。


この発見は、"EMBO Molecular Medicine" 誌に掲載された研究「P2X4受容体は自己免疫性脳炎におけるミクログリアの活性化を制御し、再ミエリン化を促進する)」にて報告された。

「私たちは、多発性硬化症の進行期治療の為の薬理学的発展に新たな道を開く発見を目の当たりにしており、この発見により多発性硬化症に苦しむ人々の生活の質を向上させる新たな扉を開きたいと考えている」

と、スペインの研究チーム "Achucarro Basque Center for Neuroscience" メンバーであり、本研究の上席著者であるMaria Domercq博士はニュースリリースで述べている。


ミクログリアと呼ばれる免疫細胞は、脳の健康に重要な役割を果たしている。これは異物が脳細胞に害を与えないよう監視するシステムとして機能すると同時に、傷ついた細胞を脳から除去する。

しかし、ミクログリアが異常反応して活性化すると炎症状態が促進されてしまう。その状態が長期間続くと、慢性炎症を引き起こして脳を傷つける。

ミクログリア反応の悪化は、炎症状態の維持を支えることによってMSの進行を促進することが知られている。

スペイン・バスク大学の研究者たちは、細胞表面受容体P2X4Rがこの炎症プロセスにおいて重要な役割を果たしていることを発見した。

 

EAE発症のマウスを研究した結果、急性疾患エピソード中のミクログリア細胞において通常よりも高濃度のP2X4Rを発見した。MS患者から採取したサンプルでも、同様にP2X4Rの量が増加していた。

EAEマウスのP2X4R活性を化学阻害剤で阻害すると、症状は徐々に進行して悪化した。さらに試験を行ったところ、P2X4Rが炎症を亢進させ、神経細胞が保護膜であるミエリン鞘を失うことで回復を妨げることが分かった。

P2X4Rがバランスのとれた免疫反応と再ミエリン形成プロセスの両方を制御する上で重要であることを認識し、この受容体の活性を強化させることで、炎症やミエリン喪失といったMSプロセスを逆転させることができるかどうかを調査した。


P2X4R活性を調節する可能性がある薬剤として、研究チームはオンコセルカ症を引き起こす線虫感染症など寄生虫を殺す為に広く使用されている承認済みの経口薬イベルメクチンを使用してEAEマウスを治療した

イベルメクチンは、オンコセルカ症の原因となる寄生虫の駆除などに広く使用されている経口薬である。イベルメクチンは、1973年に日本の土壌から発見された単一微生物に由来する。


EAE発症後にイベルメクチンの投与を行ったところ、この病気の運動症状が迅速かつ顕著に緩和された。これらの変化は、効果的なミエリンの回復(再ミエリン化)の証拠を示すと同時に、炎症性因子の有意な低下と抗炎症薬の増加を伴っていた。

「本研究の結果は、P2X4Rがミクログリア/マクロファージ分極化の重要な調節因子であることを明らかにした。MSにおける再ミエリン化を促進するミクログリア/マクロファージのスイッチを増強する為のイベルメクチン使用を私たちは支持する」

「イベルメクチンは既にヒトでは抗寄生虫薬として広く使用されている為、臨床試験における承認は容易に得られる筈である」

と研究者たちは結論づけた。


研究者たちは、これらの結果はあくまで相関的なものであり、「P2X4R活性化後にミクログリアから分泌される別因子」も再ミエリン形成プロセスに寄与している可能性があることを補足している。

しかし、研究チームは、「自然免疫系を操作してミエリン修復を促進することは、MSの治療において有望な治療戦略になる可能性がある」と考えている。

 

Anti-Parasitic Agent Eases MS Motor Symptoms, Aids Remyelination in Mouse Model of Disease

 

以上です。