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【オメガ3脂肪酸】DHA・EPAサプリ 批判意見に個人的に思うこと ②クリルオイルが秘める力


クリルオイル(南極オキアミ油)とは、EPADHAを多く含むオメガ3脂肪酸を、リン脂質、主にホスファチジルコリンとして混合したものである。通常の魚油よりも吸収率が高く、心臓を保護する作用がより期待でき、魚油にはないクリルオイル独自の脂肪燃焼効果もあることが分かりつつある。

 

先に結論からまとめておこう。

①クリルオイルは魚油と比較し、オメガ6脂肪酸が少なく、オメガ3脂肪酸飽和脂肪酸とのバランスが非常に良い。一価不飽和脂肪酸の含有量も高い。
②クリルオイルは魚油より33%、魚油エチルエステルより68%もDHA/EPAなどの吸収率が高い。
③クリルオイル由来のDHAは脳への抗酸化力が高く、神経を保護する効果もある。
④クリルオイルは魚油と比較し、抗うつ剤と同等の抗不安効果があり、認知機能改善・記憶力向上効果が魚油よりも高い。
⑤クリルオイルは魚油と比較し、女性のPMS改善効果が高い。
⑥クリルオイルは魚油と比較し、脂質異常症などを優位に改善する他、肥満解消効果もある。
⑦クリルオイルは血流改善や心臓疾患を抑制する。
⑧クリルオイルはリウマチなどの関節痛を優位に緩和する。
⑨クリルオイルは魚油と比較し、肝臓機能を優位に改善する。
⑩クリルオイルは潰瘍性大腸炎の改善効果を示し、今後、治療に使用される可能性がある。


2022年11月に報告された、クリルオイルの研究をまとめた論文から抜粋しました。それではどうギョ!🦐🦑

 

 

 


オキアミはクリルとも呼ばれ、オキアミ科全体を指す。クリルは大西洋産と太平洋産があり、それぞれ「superba」と「pacifica」と呼ばれる。

クリルから抽出したクリルオイルには、エイコサペンタン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)が含まれており、摂取によりEPADHA血漿中濃度を高めることができる。 オキアミのDHA含有量は魚油と同程度で、EPA含有量は魚油よりも重量ベースで高いことが分かっている。

オキアミ自体には生物学的に利用可能なタンパク質を含有しているが、クリルオイルは抽出過程でアミノ酸が処理されておりタンパク質は殆ど含まれていない。栄養学的には一般的なエビと似ていると言えるだろう。

クリルオイルが魚油と異なる点は、オメガ3脂肪酸がトリグリセリド(中性脂肪)ではなくリン脂質の形で集まっていることである。これは甲殻類と魚類を区別する典型的な特徴と言えるだろう。甲殻類は全脂肪酸の最大65%がリン脂質として結合していると報告されており、オキアミは28~58%の範囲で定量化されている。

 

 

 

組成について

クリルオイルの脂肪酸は、トリグリセリドではなくジアシルグリセリド(グリセロール分子に2つの脂肪酸が結合したもの)の傾向があり、最終結合部位でホスファチジン酸基と結合する為、構造はリン脂質の性質を持っている。
※魚油サプリメントは殆どがトリグリセリド、ごく一部がエチルエステルである

構造的には脂肪酸がリン脂質の形で結合しており、魚油由来の脂肪酸と同じ効果が得られるが、バイオアベイラビリティに違いがあることが分かっており、リン脂質自体にも生理活性があると思われる。

オキアミ油の脂肪酸の内訳は、飽和脂肪酸26.1~30.7%、一価不飽和脂肪酸24.2~25.9%、オメガ3多価不飽和脂肪酸34.1~48.5%となり、最後の2.5%はオメガ6脂肪酸である。


クリルオイル個々の脂肪酸内訳は以下の通り。比較として魚油も記しておく。

EPA19%(魚油27%)
DHA10.9%(魚油24%)
ミリスチン酸:7.2%(魚油3.2%)
パルミチン酸:21.8%(魚油7.8%)
ステアリン酸1.3%(魚油2.6%)
アラキドン酸:0.1%(魚油0.6%)
ベヘン酸:0.2%(魚油0.4%)
n7 コエンザイムA脂質:5.4%(魚油3.9%)
C18:1各種総合値:18.3%(魚油6.1%)
C18:3/n3 αリノレン酸1.0%(魚油0.5%)
C18:4/n3 ステアリドン酸:1.6%(魚油1.9%)

参考文献:
Metabolic effects of krill oil are essentially similar to those of fish oil but at lower dose of EPA and DHA, in healthy volunteers

 


こうしてみると、オメガ6脂肪酸が少なく、オメガ3脂肪酸飽和脂肪酸とのバランスが非常に良い。一価不飽和脂肪酸の含有量も高い。

これらの脂肪酸のうち、28~58%がリン脂質として結合しており、その殆どがホスファチジルコリン(複数存在するリン脂質の総称)であり、リン脂質の様々な組み合わせが48~80%、ホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルグリセロールが1%台というデータが出されている。

さらに、幾つかの最新研究では未確認の成分が21~24%含有されていると報告が出てきている。ホスファチジルセリン(リン脂質の成分の一部で脳の栄養素とも呼ばれている)ではないかと考える専門家もいるが現時点では判明していない。

また、一部のジグリセリドは、さらにコレステロールと結合している(総脂質量の0.79-4.65%)。上記の通り、脂肪酸の約半分強はリン脂質の形で結合しており、中でもホスファチジルコリンは最も顕著である。

 


その他、クリルオイルの成分で生理活性を加える可能性があるものは以下の通り。


オキアミ100gあたり66.1mgのコレステロールが検出されており、エビの約3分の1だが、他の魚油製品とほぼ同量である。他の研究では、クリルオイルは17~76.3mg/100g、オキアミ自体は62.1~72.6mg/100gの範囲と出ている。

アスタキサンチンの含有が報告されており、エステル化されている可能性がある(最大95%)。 総カロテノイドはオイルの非常に多く、一方でβカロテンとビタミンA両方はごく僅かである。

ビタミンE

新規フラボノイドで、6,8-di-c-glucosylluteolin(フラボノイドの一種:詳しくはリンク先)に似ていると報告されている。

 

参考文献:
1. Evaluation of the effects of Neptune Krill Oil on the clinical course of hyperlipidemia
2. Determination of astaxanthin stereoisomers and colour attributes in flesh of rainbow trout (Oncorhynchus mykiss) as a tool to distinguish the dietary pigmentation source
3.Krill oil. Monograph

 

 

上記の通り、クリルオイルにはフェノールやコレステロールが含まれていることが分かっている。アスタキサンチンの含有量は、経口摂取サプリメントとしては低いと考えられる。

オキアミの外骨格には天然由来のフッ素が非常に多く含まれている(350mg/100g)。組織は低いが、死後、殻をすぐに取り除かないと外骨格から肉に移行することがある(最大9mg/100gが報告されている)。

よって、フッ素はクリルオイル摂取における問題であると考えられている。このフッ化物の99%以上が外骨格に含まれる為、外骨格を直ちに除去することで心配ないと考えられている。

これがクリルオイルサプリメントの懸念材料となるか、現時点では不明である。また、クリルオイルの水銀リスクは全く無いと考えられている。フッ素汚染の問題とリスクには論理的根拠が存在するが、クリルオイルサプリメントのリスクの度合いは不明である。これは、業者の適切な加工と取り扱い次第だろう。



 

薬物動態学・バイオアベイラビリティ


様々な魚油サプリメントのバイオアベイラビリティをテストしたところ、クリルオイルが最もよく吸収されることが判明している。1680mgの魚油・クリル両オイルを用いた研究では、以下のAUC(臨床検査における受信者動作特性)が出ている。


クリルオイル:80.03+/-34.71%
魚油トリグリセリド:59.78+/-36.75%
魚油エチルエステル:47.53+/-38.42%
※クリルオイルは魚油より33%、エチルエステルより68%吸収率が高い

 

血清については、クリルオイルの経口摂取(500mg中EPA/DHA合計90.5mg)により、魚油と同様に血漿中のDHAEPA、中間体(ドコサペンタエン酸)、アラキドン酸の増加が確認されている。

参考文献:
1.Incorporation of EPA and DHA into plasma phospholipids in response to different omega-3 fatty acid formulations--a comparative bioavailability study of fish oil vs. krill oil
2.Metabolic effects of krill oil are essentially similar to those of fish oil but at lower dose of EPA and DHA, in healthy volunteers



 

神経学

神経保護
クリルオイルと同形態の、リン脂質(ホスファチジルコリン37.2%、血清リゾホスファチジルコリン36.6%)形態のサプリメントDHAを摂取したマウスと、トリグリセリド形態の魚油サプリメントDHAを摂取したマウスを比較した実験が行われている。

毒素(ストレプトゾトシン)を注射したラットの脳において、クリルオイルと同等のリン脂質形態のサプリメントDHAを摂取したラットの脳は、より強力な抗酸化作用を示した。

抗酸化作用で評価すると、魚油サプリよりもクリルオイルサプリのほうが神経保護効果が高いという結果が出た。

参考文献:
Effect of dietary docosahexaenoic acid connecting phospholipids on the lipid peroxidation of the brain in mice

 

肥満の抑制
アラキドノイルグリセロールは、アナンダミドと同じく肥満患者の間で増加する内因性カンナビノイドの1種であり、高脂肪動物に誘発されることがある。

アナンダミドには影響がない一方で、クリルオイル(EPA216mg/DHA90mg)を4週間消費すると、肥満被験者で内因性カンナビノイドが減少することが分かってきた。

同様の現象はラットでも確認されている。 これらの内因性カンナビノイド分子はアラキドン酸に由来し、魚油由来の脂肪酸EPAおよびDHA)によって血漿アラキドン酸が低下する効果と同じである。

参考文献:
Differential alterations of the concentrations of endocannabinoids and related lipids in the subcutaneous adipose tissue of obese diabetic patients

 

記憶と学習
クリルオイルは、魚油由来の脂肪酸とホスファチジルコリンの両方から構成されている為、記憶を促進する効果をもたらすと考えられている。その両方が個別に記憶と学習の改善に関連している。

専門家は、アスタキサンチンの含有量が、個々の抗不安作用や認知強化作用の役割を果たしていると考えている。

オキアミのリン脂質について、脳の海馬にある歯状回(最初にシナプスの電気信号を受ける場所)における神経新生と関連した試験が行われている。301〜420mgのEPADHAを与えたラットを用いた放射状迷路テストにおいて、パフォーマンスを増加させたことが指摘されている。

この研究では、100mgのEPADHAを与えたラットには効果がないことを示した。その他、エサに200mgのクリルオイルを6週間与えた成体ラットは、イミプラミン(抗うつ薬の材料)を含む混合抗うつ効果と共に認知強化効果が認められた。

クリルオイルは成体ラットにおいて、明らかな認知機能と記憶力の向上と関連していると考えられる。ただ、その為には高用量を経口摂取する必要があり、ヒトに相当する量は160mg/kg体重と考えられている。

参考文献:
1.Impact of astaxanthin-enriched algal powder of Haematococcus pluvialis on memory improvement in BALB/c mice
2.Enhanced cognitive function and antidepressant-like effects after krill oil supplementation in rats

 

PMS
月経痛は、子宮内のプロスタグランジン(発熱や痛みを起こす生理活性脂質)とロイコトリエンの流束(フラックス)を誘発するプロゲステロン(黄体ホルモン)の減少に伴うアラキドン酸の放出と関連している。

この増加は、アラキドン酸のCOX(プロスタグランジン合成酵素代謝物の局所生産を引き起こす為、血管収縮および痙攣の原因となる筋膜収縮を引き起こす。

魚油由来の脂肪酸であるEPADHAは、炎症性の低いプロスタグランジンの生成においてアラキドン酸と競合することにより、PMSを軽減すると考えられている。


研究で、PMSの女性を対象に、90日間にわたり毎日2gのクリルオイルサプリメントの摂取をしてもらった。

全ての測定症状(乳房圧痛、膨満感、ストレス、イライラ、うつ症状、体重増加など)が日が経つにつれて改善し、EPADHAの含有量が同程度であるにも関わらず、魚油よりもクリルオイルのほうが効果が優れているという結果が出た。

この研究では、魚油とクリルオイルの両方で、膨満感、痙攣、体重増加の身体症状に対して有効だったが、神経面においてはクリルオイルのみ効果を示したことが報告されている。

参考文献:
1.Eicosanoids and ovulation
2.Evaluation of the effects of Neptune Krill Oil on the management of premenstrual syndrome and dysmenorrhea

 



心臓・血管への効果

心筋組織
クリルオイルの摂取は、ラットの心臓組織のオメガ3含有量を増加させることが確認されている。心筋梗塞の前兆時にクリルオイルを摂取することで、その後の心臓肥大の進行を抑制することができる。

参考文献:
Krill oil attenuates left ventricular dilatation after myocardial infarction in rats

 

脂質異常の改善
クリルオイルの摂取(3000mg)は、魚油(1600mg)とほぼ同等のリポタンパク質コレステロールを多く含む粒子)及びトリグリセリドを正常化させる効果を有することが報告されている。

高脂血症患者に、1日1000~1500mgのクリルオイルを90日間にわたり投与した研究では、以下の結果が報告された。


HDL:42.76~43.92%増
LDL:32.03~35.70%減
コレステロール13.71~13.44%減
中性脂肪11.03~11.89%減


上記よりも少し多い1日2000~3000mgの投与で、効果が僅かに上昇した。HDLの改善は1日3gで59.64%、LDLの減少は39.15%に達した。いずれにしても全ての治療が魚油サプリを用いた場合に、症状改善に必要とされる基準量(1日3000mg)よりも少ない量で効果が大きく上回った。

参考文献:
1.A 21-day Daniel fast with or without krill oil supplementation improves anthropometric parameters and the cardiometabolic profile in men and women
2.Evaluation of the effects of Neptune Krill Oil on the clinical course of hyperlipidemia

 

 

 

炎症と免疫学

関節痛緩和
関節リウマチのラットでは、同量の魚油由来EPA+DHAよりも、クリルオイルのほうが高レベルで関節炎のスコアを低減することができた。

ヒトで試験した結果、クリルオイルを1日300mg、30日間摂取することで、関節リウマチ患者の変形性関節症指数評価を20.3~28.9%の範囲で有意に改善することができた。これは魚油と共通のメカニズムである。魚油よりもクリルオイルのほうが優れている訳ではなく、吸収率が高い為と思われる。

参考文献:
Evaluation of the effect of Neptune Krill Oil on chronic inflammation and arthritic symptoms



 

器官系との相互作用

肝臓機能改善
クリルオイルと魚油を比較して、肝臓への作用に差があることが指摘されている。EPA+DHA濃度が同程度(0.29~0.31%)のクリルオイル、およびフィッシュオイル(1.1%)を添加した場合、クリルオイルは分析された4892の遺伝子を活性化できたのに対し、魚油は192を活性化したという結果が出た。

魚油、クリルオイルどちらの処理も肝グルコース産生を抑制するようだが、脂肪生成遺伝子(SREBF1、MLXIPL)を抑制し、コレステロール生合成経路を活性増加させる効果を持つのはクリルオイルだけである。

その他、クリルオイルは脂肪酸のβ-酸化を促進(つまりエネルギー増産)するのに対し、魚油は効果がないことが報告されている。

ラットの高脂肪食に2.5%のクリルオイルを組み合わせると、体重増加および肝脂肪増加が抑制された。これは、ミトコンドリアへのクエン酸流入およびその後の脂肪酸合成の減少(55%減少)と肝脂肪酸化の増加による影響と考えられる。

これはトリカルボン酸トランスポーター(TTT)の速度低下に繋がっていると考えられ、TTTの速度低下が肝脂肪生成の減少に繋がったと、他の研究でも結果が出ている。

動物実験において、クリルオイルは、脂肪生成に関与するトランスポーターの速度を低下させることにより、過食時の肝臓脂肪蓄積を抑制することが実証された。クリルオイル由来のEPADHAは、魚油由来よりも高い効果があることも分かった。

参考文献:
1.Differential effects of krill oil and fish oil on the hepatic transcriptome in mice
2.Krill oil versus fish oil in modulation of inflammation and lipid metabolism in mice transgenic for TNF-α

 


潰瘍性大腸炎の改善効果
化学物質を用いて誘発させた潰瘍性大腸炎を発症したラットの食事にクリルオイルを5%添加すると、炎症症状の軽減と考えられる腸の保護効果を得ることができた。今後、潰瘍性大腸炎の治療に使用される可能性がある。この研究についてはクリルオイルのみで、魚油との比較試験は行っていない。

参考文献:
Dietary supplementation of krill oil attenuates inflammation and oxidative stress in experimental ulcerative colitis in rats

 

 

・・・という訳で、如何でしたでしょうか。魚油サプリと比べてクリルオイルサプリは酸化に強いだけではなく、魚油サプリでは得られない効果まで期待できることが分かってきました。但し、効果を得る為には必ず高容量を服用すること。これが重要です。

引き続きクリルオイルに関する記事をアップしたいと思います。

 

その③へ続く